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研究助成事業・国際賞選考報告

 

平成29度助成事業助成対象者コメント 助成を受けて

若松 大輔

 このたびは、京友会研究助成を採択していただき、誠に感謝しております。私は、教師の専門職性と歴史教育の研究を行っています。例えば、教師の授業づくりやカリキュラム開発における力量とはどのようなものなのかを検討しています。
 現在は、アメリカにおける教師の知識研究を対象にしています。教師の知識研究は、1980 年代からリー・ショーマン(Shulman, L.)を中心に本格的に始まり、その後もショーマンのもとで学んだ研究者が各教科の知識研究を展開してきています。ショーマンの知識研究で特筆すべきは、教師の専門職性の根拠としてPCK(Pedagogical Content Knowledge)を主張したことです。ショーマンによると、「PCKとは、つまり教師に独自の分野である内容(content)と教育方法(pedagogy)の特別な混合物/結合物(amalgam)であり、専門職的な理解の特別な形である」といいます。つまり、教師の専門的な力量の内実として固有の教育内容と教育方法に関する知識を挙げたのです。
 歴史教育の分野では、サミュエル・ワインバーグ(Wineburg, S.)とウィルソン(Wilson, S.)が歴史教師のPCK 研究を行いました。彼/彼女のPCK 研究の展開と批判を仔細に検討することで、教師の授業づくりにおける力量の内実を明らかにしようとしています。
 いただいた研究助成金は、ワインバーグらの書籍費に使わせていただきます。

山口 将典

この度は京友会助成事業に採択してくださり、誠にありがとうございます。

私は現在、近代以後日本人がどのように富と貧を捉えてきたか、という研究を行っております。現代では、国内における格差や貧困がメディアに大きく
取り上げられ、その実態や解決方法について数々の研究がなされています。しかし、この20 年ほど貧困の社会構造的要因がクローズアップされてきたの
にも関わらず、ホームレスの人々や生活保護受給者、働けない人々への差別は依然として根強く残っています。それがなぜかを理解するためには、私たちの日常的な意味世界において、私たちは富と貧がいかなる要素に起因すると考えているのか、またそれらにどのようなイメージが付与されているのかを歴史的・文化的に検討する必要があります。より多くの人に貧困解決の必要性を訴えるためには、逆説的ですが、一旦「貧困は自己責任である」という声に耳を傾け、その背景を探ることから始めなければならないということです。

同様の問題関心を持つ先行研究では、「貧困」がいかにして定義され、その原因がどのように語られてきたかが調査されてきました。しかし、貧しさへの差別感情は、貧困への関心からというよりむしろ自らがどう生きるかという指針の中に含まれているのではないかという仮説を念頭に置いて、本研究では戦前の主要な生き方指南である「修養」に立ち返りたいと考えております。その中でどのように庶民としての生き方や貧富の観念が提示されていたのか、どのように読み手が解釈したのかを検討し、時間的な変遷を追っていくことが研究の目的です。

助成金は、資料収集のための交通費と学会参加費に充てさせていただきます。貧困をめぐる状況の改善にわずかでもつながっていくことを目指し、研究
に邁進していく所存です。

高野 了太

 この度は京友会助成事業に採択してくださり、誠にありがとうございます。
 私の研究関心は「集団間対立」で、なぜ人と人とが憎しみあうのかを、心理学の観点から解き明かす試みをしています。集団間の溝を深める要因はいくつもありますが、その中でも私は「畏敬・畏怖の念」という感情に着目しました。
 満天の星を眺め、広大な宇宙を感じたとき、自分の存在をちっぽけに思うことがあると思います。心理学ではこのような感情反応を”Awe”と呼び、近年注目を集めています。先行研究では、エッフェル塔から街を一望する想像をする、あるいは大自然の絶景を空撮した動画を視聴することで、人生に対する満足感が増加し、より利他的に振舞うようになることが示されています。しかし、Awe は人に利を与えるばかりなのでしょうか。
 日本でこのAweを感じる例を考えてみると、地震や津波が挙げられると思います。確かに震災後、家族や友人を思いやる気持ちは一層強くなりますが、一方で「不謹慎」という言葉が横行するのもまた事実です。このことから、Aweは、その種類によっては、そして文化によっては人と人との対立を激化してしまう可能性を秘めていることがわかります。私は以上に挙げたことを、調査・実験を通じて、実証的に解明したいと考えています。
 いただいた助成金は、上記研究を発表する国際学会の旅費の補助に充てさせていただきます。積み上げた研究結果を多くの人に知ってもらい、より洗練されたものとするため、これからも研究に邁進していく所存です。

宮坂 まみ

 この度は京友会研究助成事業に採択いただき,誠にありがとうございます。
 私は注意欠如・多動症(ADHD)の認知機能に関する研究を行っています。ADHDは,不注意,多動性,衝動性を主症状とする神経発達障害の一種です。それらの特徴は,児童期から,会話に割り込む,なくし物が多いなどの形で現れることが知られています。こうした問題は,大人になるにつれておさまるものもあれば,続くものもあります。例えば,仕事を完成させられない,衝動的な行動が多いといった形で現れることがあります。そのため,こうした症状を低下させることはADHD のある人が生活しやすくすることにつながると考えられます。
 認知機能とは,理解や判断,記憶,言葉の理解といった知的な機能を指します。ADHDのある人は,目的を達成するために適した行動を判断したり実際に行ったりするための認知機能の働き方がADHDのない人とは異なり,そのために前述のような症状が現れるとされます。私は,環境を調整することでこうしたADHD症状を緩和させられると考え,研究を進めてきました。今回の研究では,モチベーションを上げる状況によって認知機能が変化する際の脳活動を測定し,環境調整の認知機能への影響について調べてまいります。
 いただいた助成金は,主に調査費用に充てさせていただきます。それによって得られた結果を学会発表や論文執筆に活用させていただき,社会に還元できるよう努力してまいります。

呉 桐

 この度は平成29 年度京友会助成事業に採択してくださり、誠にありがとうございます。
 私は女性の文化や生き方に関心を持っており、現在は近代に遡り、1920 〜 30年代においての「モダンガール」と呼ばれていた女性群に注目して研究を進めております。彼女たちはしばしば社会規範、とりわけジェンダー規範から逸脱した存在だと見なされていましたが、女性自らが新たな生き方を模索するという意味では、近代的女性主体の形成と大いに関わっていると言えます。
 従来の研究では、モダンガールの表象は男性目線で捉えられ、エロティシズムの観点から欲望の装置だと見なされることが多いほか、ポストコロニアルリズムの文脈において、西洋/ 支配者によって規定される存在だと位置付けられたりもしました。そうした中で、当事者だった女性の立場性が看過されがちです。従って、本研究の目的は、女性自身にとっての「モダンガール」のイメージを解明することで、近代の女性文化およびそこに映し出される社会意識を考察することにあります。
 今までは上記のテーマをめぐり、主に中国を対象に研究を行ってきました。今回頂きました助成金は、来年7月に開催される中国社会学会年会の参加に関わる費用に充てさせていただきます。学会報告で得た知見を発展させ、今後は近代における世界同時現象としての「モダンガール」に注目し続き、比較研究に励んでいきたい所存です。貴重なご支援をいただきましたこと、重ねてお礼申し上げます。

小保内 太紀

 このたび、京友会様からの研究費助成を頂けることを大変感謝しております。
 私の研究内容は、教育社会学はじめあらゆる領域の社会学の基礎となる理論社会学に属するものであり、社会学そのものの学説史などにも関係するものです。このように申し上げますと、いかにも抽象的で複雑な議論をしているように思われるかもしれませんが、私が取り上げるのは、その中でもことさら人間の生にとって基底的な「生活世界」や「社会化」などの概念です。ゆえに、私の研究は抽象的な理論研究の形をとりながらも、実際には極めて現実的な主題を扱っており、また、日常生活そのものの在り方を見つめ直すためのものであるといえます。
 したがって、今後進めていく研究は、古今東西の社会学の理論的な研究を丹念に読解しつつ、ときには哲学や人間学、心理学、人類学、経済学など関連する周辺領域の学問にも踏み込み、日常生活における人間と社会のかかわりを分析していくものになります。幅広い読書量と視点の鋭さが要求されるものであり、日々常に頭を働かせながら研究に勤しんでいこうと思っております。
 助成頂いた研究費につきましては、諸々の先行研究を収集する費用に充てようと思っております。今後より一層幅広く、そして深く学問を探求していきますので、今後とも応援のほどをよろしくお願い致します。

趙 相宇

 研究助成をありがとうございます。私は現在、主に日韓関係、中でも「反日」ナショナリズムについて研究しています。
 「反日」と言えば日韓関係の障壁、そう思われるかもしれません。現に、アカデミズムにおいても、日韓関係へ悪影響を及ぼすものとしてその行き先を憂う論考は数多くあります。ただ、それにも関わらず、日韓関係はある意味「うまく」行っている側面もあり、マスコミで騒がれるほど関係悪化を実感できない人も多いことでしょう。こうした状況をどう理解すればいいのでしょうか。
 卒論では、その手がかりとして、2000年代半ばから韓国・群山市において日本的近代風景が「懐かしく」まなざされる現象を考察し、その背景に90年代における「日帝残骸生産」が深く関わっていることを論じました。国策として植民地時代の建築物が次々と消えていくことで、かえって守るべき文化財としてその価値が浮上し、観光資源となり得たのです。一方、群山は、1919年に独立を求めて植民地朝鮮で巻き起こった3・1抗日運動所縁の地としての側面も持ち、その舞台を再現するという名分の下で「懐かしさ」の観光地が整備されました。つまり、「反日」と対日「ノスタルジア」にはお互い反発し合うのではなく、相互に循環する中で共存関係を結ぶメカニズムがあるのです。
 今後は、更なる観光地の調査と、それらと関係が深い3・1 節、8・15 光復節の変遷を追うことで、共存のメカニズムをより追求して参りたい所存です。

梶原 駿

 このたびは京友会研究助成の対象として採択してくださり、誠にありがとうございます。本研究の目的は、デューイ(John Dewey, 1859-1952)の「衝動」(impulse)概念に焦点をあて、動的な成長というデューイの思想を批判的に検討し、葛藤や困難とともに一人ひとりが責任ある決断を下しつづける生き方を支え続けるというデューイ「衝動」概念の現代的意義を解明することです。
 デューイは20 世紀アメリカの教育思想家であり、その哲学は終わりなき成長の思想です。デューイは成長を「経験の絶え間ない再編成」として、その過程を不確実な問題状況での責任ある「知的探究」と論じます。しかし、例えば就職や選挙といった大きな分岐点での決断から、生活の中での小さな決断に至るまで、不確実な状況では知的に責任ある形で経験を再編成し続けることに困難が伴います。そしてベック(1998)が指摘するように、予測不可能性が増大した現代のリスク社会では、上記の困難は一人ひとりにとって喫緊の課題です。
 以上の課題に応えるべく、本研究は、困難の中での知的な経験の更新を支え続けるものとしてデューイの「衝動」概念を取り上げます。その際手がかりとするのは、『Human Nature and Conduct』(1921)の「思考と衝動は双子の関係である」という一節です。先行研究では、多くが「知的探究」という側面と「衝動」という側面のどちらか一方に着目しています。こうした状況から、主に「衝動」に注目しつつも、デューイの哲学における「知的探究と衝動」を「双子の関係」として再吟味することは意義深いと考えています。今後は、経験を更新する過程で生じる内的葛藤やコミュニケーションにおける困難に対し、デューイの哲学がいかに応答し得るかを描き出す予定です。具体的には、「政治教育」や「政治的リテラシー」など、一人ひとりの責任ある決断が求められる具体的な生活場面で生起する課題と対話しつつ、「衝動」について多くが語られる『Art as Experience』(1934)を中心に、後期デューイの思想を研究して参ります。
 頂いた助成金は文献購入に充てさせていただきます。本研究を具体的な生活場面の課題にも応え得る骨太な思想研究にするため、今後も邁進していく所存です。

藤居 尚子

 この度は平成29 年度京友会研究助成に採択を頂き,誠にありがとうございます。
 私の研究は,自殺をめぐる実践に携わる心理臨床家への支援や教育研修のあり方に関するものです。 自殺予防の重要性は社会の共通認識であり,自殺を考える人たちに寄り添う心理臨床家の果たす役割は大きなものです。一方で,そのような実践は様々な局面で臨床家に心理的困難を感じさせるものでもあり,臨床家に対し適切な支援や教育研修を受けられる機会を提供することが重要です。
 そこで私は,心理臨床家が自殺をめぐる実践においてどんな困難を感じているのか,その現状を明らかにし,さらにどんな支援や教育研修が求められており,また必要であるのかに関して幅広く調査や実践研究を行いたいと考えています。ここでいう「自殺をめぐる実践」には,自殺の危機にある人への対応や自殺が起きた際の関係者ケアの他,臨床家が担当クライエントを自殺で亡くすという出来事も含みます。
 上記について,まずは若年層の自殺死亡率の高さを踏まえ高等教育機関の学生相談カウンセラーを対象とした調査,そして教育研修の点では臨床家養成課程大学院生を対象としたプログラムの企画から着手する予定です。
 今回の助成金は,調査等の対象者への謝金や資料購入の一部に充てさせて頂きます。本研究の成果が心理臨床家の支援につながり,ひいては生と死の狭間にある人たちの命を守ることにつながるよう,日々励んでまいります。

鍛冶 美幸

 このたびは、平成29 年度京友会の研究助成事業の助成対象者として選んでいただき、誠にありがとうございます。
 私は動作を通した非言語的関り合いが、心の健康や成長にどのような影響を及ぼすかを研究しています。人間は、実際に言語化して語る内容よりもはるかにたくさんのことを表情や仕草で表現しています。また、心理的ストレスが高まったときに身体の不調が生じるなど、心理的体験と身体的的体験には深いつながりがあると言われています。
 今回は心と身体のつながりを研究する視点から、臨床心理学的支援に役立つ援助プログラムを構成するための重要な情報源である心理検査についての研究を進めたいと考えています。なかでも深層心理の理解に関して多彩な情報を提供してくれるロールシャッハ検査での、身体表現や身体的体験について検討したいと考えています。ただし、身体表現や身体的体験は言葉でとらえにくいため、客観的で詳細な検討を行うことが困難であるとも言われています。そこで、本研究では舞踊学や運動学の領域で用いられている動作理解の視点を取り入れ、心理検査場面での心と身体の関連について研究したいと思います。
 支給していただく助成金は、資料の購入や舞踊学・運動学における動作研究の専門家との通信費用、関連学会の参加費等に使用したいと思います。
 本研究の成果が、心理検査を通したより豊かな人間理解に役立つよう、今後とも邁進していく所存です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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