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研究助成事業・国際賞選考報告

        

平成31(令和元)年度助成事業助成対象者報告

鄭 漢模

 この度は、京友会助成事業に採択して頂き、誠にありがとうございます。「大学とは何か」。簡単には答えられない問かと思います。大学はまるで生物のように、進化し続けてきており、今日様々な形を有するようになったからです。例えば、各々異なる「生態系」の中で、英国の大学は3年制、日本の大学は4年制に進化しました。しかし、どちらかの大学が突然「大学」でなくなることはめったにありません。そこには、それらを「大学」と認識させてきた連続性があるからです。
 1969年、英国において設立されたオープン・ユニバーシティ(以下、OU)は、そういった連続性に大きな影響を与えた大学です。George Fallisは、大学とは、「常に場所」であり、大学の学びとは「常に同じ時間、同じ場所に集まった人々のコミュニティの中に存在」してきたとしました。しかしOUは、この説明に当てはまりません。OUは、物理的なキャンパスを持たず、学生たちはテレビ、ラジオを通して自主的に学ぶ大学であり、OUの教員と学生たちは、それぞれ異なる場所、時間の中で、教えもしくは学び、直接対面する機会は非常に限られているからです。
 私が本研究を通して目指すのは、こうしたOUを、1960~70年代英国における大学論を踏まえつつ、上述した「場」を含め、「制度」「教育機関」いう3つの観点から、大学の連続性に与えた影響を追求し、最終的には「大学とは何か」に対する答えのヒントを獲得することになります。
 頂いた助成金は、主に大学論に関する書籍の購入に充てさせて頂いております。本研究の結果が、大学の過去と現在を究明し、今後の方向性を考えることに少しでも役立てますよう、励んでいきたい所存です。今後とも応援のほどよろしくお願い致します。

元木 幸恵

 この度は令和元年度京友会研究助成に採択を頂き、誠にありがとうございます。
 私の研究は、心理療法の中でも精神分析的心理療法に関しまして、そこで用いられている様々な概念と心理検査、特にロールシャッハ法における概念との異同についての研究をしております。たとえば「不安」という言葉は、精神分析の文脈から広まって行きましたが、心理療法・カウンセリングにおいて使われている概念や用語が、あまりにも広く使われてきたことで、同じ言葉であってもロールシャッハ法においては異なる意味まで包含している可能性があると考えております。
 そこで私は、社会一般に広まっている概念のうち、ナルシシズム(自己愛)、あるいは対人恐怖といった概念に焦点を当てて、幅広く調査や実践研究を行いたいと考えています。この場合、その両方の心性ともに、ある程度は多くの人が持ち合わせていると考えられます。
 上記について、まずは大学生を対象に調査(ロールシャッハ法を中心としたもの)を実施しようと考えております。また、実際の臨床例として、私が勤務する精神科栗肉でも調査を実施する予定です。
 今回の助成金は、調査等の対象者への謝金や資料購入の一部に充てさせて頂きます。本研究の成果が心理臨床家の支援につながり、心理検査を通したより豊かな人間理解に役立つよう、今後とも邁進していく所存です。

坂田 千文

 この度は、京友会研究助成事業に採択くださり、誠にありがとうございます。
 私は、他者と一緒にいるときのヒトの注意や記憶に関して研究を行っております。一人でいるときと違って、他者と一緒にいるときにヒトはどのように外界を知覚し、記憶するようになるのかを、認知心理学の手法を用いて解明する試みを行っています。
 カメラが外界のほぼ全ての情報を記録できるのに
対して、人間の視覚処理には限界があります。全てを見ているつもりでも、ものの存在を見落としてしまうことやどのようなものがあったのか記憶されていないことがあります。注意は、外界にあるものが何であるのかに関する情報やどこにあるのかに関する情報を処理するのに大きくかかわっています。注意を向けてものを見ることで、そのものが何であるのか、どこにあるのかを長期的に記憶することができます。
 同じ部屋にいる他者と一緒に、別々の物を探していると、自分の物を探している最中であっても、ふと、他者の探し物に気を取られ、偶然目に入ったそれが気になってしまうことはないでしょうか。私はこれを実験課題に落とし込んで、どの程度他者の探し物に注意が割かれるのか、また、時間が経った後で他者の探し物が実際にどこにあったのかをどの程度記憶しているのかについて、検討しようとしています。
 いただいた助成金は、調査費用に充てさせていただきます。本研究によって得られた結果は、学会発表や論文執筆によって報告いたします。

比護 遥

 本年度の京友会研究助成事業に採択いただきましたことを、大変光栄に存じております。
 私の研究テーマは、近現代中国における読書の歴史です。読書というのは単なる私的な趣味の領域に留まるものではありません。例えば中国には「読書人」という言葉があり、本を読むことをステータスとする伝統がありました。近代に入ってからも、知識を持った少数の人が社会的責任を果たすという発想は根強く残ります。
 他方で、教育の普及や技術の革新により、徐々に大衆も読書に参入するようになりました。そのとき、政治的な要請からくる動員の発想ともしばしば結びつくことになります。このように、読書行為に現れる知識人と大衆の関係から、社会の秩序構造の変化を見通せるというのが現時点での私の見通しです。
 修士論文で取り扱う1930 年代は、まさに読書人口が拡大するとともに、国家的な危機に直面していた時期でもあり、読書に対する様々な期待が交錯していました。大衆の読書を促す言説の分析から、当時の状況を整理することが当面の課題です。現在は、『読書月刊』『読書生活』などの読書指導を目的とする雑誌メディアを調査しています。その先は、中華人民共和国成立以降のことも調べて、卒業論文で取り上げた1980 年代以降の議論につなげていきます。
 いただきました助成金は、資料収集のための費用に充てる予定です。貴重なご支援に改めて深くお礼申し上げるとともに、有効に活用できるよう研究に邁進する所存です。

PIFFAUT GALVEZ Marcelo Alejandro

 この助成を受けて非常に感謝している。修士課程の院生で留学生の私にとっては研究に大きく貢献するだけでなく、京都大学教育学部同窓会から信頼を与えられたことという意味する。それで、助成を生かした実りある研究に打ち込む義務の概念を強化すると信じる。
 日本における外国人の最大半は東アジアの国から来ているが、ラテンアメリカからの移住も重要な過程である。移民の先行研究にしたら、ブラジルからの日系人はラテンアメリカ外国人の大部分となっていることから、日系人および出稼ぎ者の現象に焦点を当てた研究がたくさんあることがわかるようになった。しかし、自分の研究は、今までの研究において無視された少数派である日系人ではなく日本文化および家族との直接関係を持っていないイスパノアメリカ人1に焦点を当てることである。日系人ではない移民は日本に直接関係する家族文化がないから、日系人の文化とその経験と異なると仮定している。こうして、現在、関西地方に住んでいるイスパノアメリカ外国人労働者の適応過程における主観的な社会文化的体験がどのようなものであろうか?人類学や社会学の視点から、これらの移民者の経験を解明する。移民自身の生活、経験、状況に関連する視点を理解することを目指しているため、データを収集するには、調査とともに定性的インタビューが行われることである。

1 18カ国【コスタリカ、キューバ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア、パナマ、アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラ】のなかで、その国籍のある外国人である。

月川 青花

 この度は京友会研究助成事業に採択いただき、誠にありがとうございます。
 私は、戦前の日本海軍と帝国大学がどのように連携してきたのかについて研究しております。日本海軍は技術士官の養成にあたって、その教育を帝国大学に依託していました。この制度は、帝国大学在学中の学生の志願者から選抜した者を海軍学生として、毎月一定の学資を支給し、卒業後は海軍の技術士官に任じるというものであり、明治期から昭和期にわたり続いてきました。
 こうした海軍依託学生の制度がどのように運営されてきたのかを分析することで、帝国大学の「海軍技術者養成機関」としての一面を明らかにしたいと私は考えています。また、海軍技術者にとって欧米諸国へ留学し、先進的な軍事技術を学ぶことは重要なステップであったため、依託制度の研究と併せて海軍留学制度の全貌も解明していくつもりです。
 それにあたり、東京大学文書館所蔵の東京帝国大学の公文書や、防衛研究所所蔵の海軍の公文書、外務省外交史料館所蔵の海軍留学生に関する史料を分析してまいります。また、海軍依託学生でのちに代表的な海軍造船官となった「平賀譲」が遺した文書を検討することで、制度の内実を個人の視点から捉えることも試みます。
 いただいた助成金は、主に上記の史料調査費用に充てさせていただきます。そして研究をより一層深め発展させられるよう、努力してまいります。この度は、修士課程一回生という身でありながら貴重なご支援をいただきましたこと、重ねて御礼申しあげます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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